第9章の絵

第9章1

「素晴らしい働きだ、ショーン君!証拠を見つけるとはね。さすがはスーアルバであるターナー夫妻の息子だ!いやはや帝国調査隊でもないキミを捜査に混ぜることに一抹の不安を覚えた時もあったのだがね、無事に吹き飛ばしてくれたようだ!そうそう吹き飛ばしとえば私も以前、さる邸宅を呪文で吹き飛ばしてしまったことがあってね!あの時は流石の私も焦ったよ!しかし恥じることや悔やむことはない、そう進むべきは未来なのだ!あの時の失敗を恐れぬ心が今の私を作り上げている!作り上げていると言えば……

- 裏話 -

警部とショーンのヒソヒソ話。
ブーリン警部の顔とユビキタス・ヴィクトル先生の仲良し描写を入れておきたかったのでこのシーンを採用しました。

ここは他にも描きたいシーンが多くて、ユビキタスの処分の話を聞いてゾクっとするショーンの姿も描きたかったです。書くとしたら黒ベタ背景に白い稲妻と三白眼ですね。

「建物カット集Ⅱ」に載っている、アメリカの田園風景の邸宅を見ながら描きました。左が学校で、右は無関係なモブ邸宅なんですが、注釈入れないと分からないですよね。学校と校庭だけ書けばよかったなと思いました。

著:ジム・ハーター
前回紹介した「建物カット集Ⅰ」に続いて。Ⅰは古代文明・アジア・ヨーロッパ、Ⅱはヨーロッパ・アメリカの建物カット集です。どちらもヨーロッパ表記ですが、Ⅰはイギリス・フランス等、Ⅱはドイツ・イタリア・スペイン・ソ連等で国別になっています。
こちらの本のp.244あたりからアメリカ合衆国の田園風景が描かれてるのすがそこが一番好きです。アメリカは合衆国以外にも、先住民族やラテンアメリカも収録されています。

第9章【Arbor】アルバ 1

 古代、ルドモンドの学者や魔術師は、宮廷庭園の東屋に集い、学問や研究を行った。 ツタの葉が鬱蒼と巻きついた東屋の柱と、一体に見えるほど、知に打ち込む彼らを見て、民衆はいつからか、彼らを東屋そのもの、【 ...

第9章2

「ギター弾かれるんですか?」
「ははは、太鼓演奏のプロと比べる腕じゃないよ」
「私はそんな、プロといっても……」
「チューニングの方法が分からないんだ」
(──ホントに比べるほどじゃなかった……)

- 裏話 -

アーサーくんのお部屋。
このシーン自体は第8章3にあります。

初期は2コマ構成で、下のコマに紅葉とキッチン側背景を描こうとしてたのですが、なんか野暮ったくなってしまったので紅葉を消してアーサーの机を描きました。机採用して大正解だなと思いました。机に乗っている一番上の付箋だらけの辞書は、研究社の「ライトハウス英和辞典」がモデルです。本家はエンブレムが丸ではなく四角い灯台が描かれています。これで英語を勉強していたときに【星の魔術大綱】の物語を思いついたので、私にとって一番大事な本です。この辞書でぜひ「blaze」と「ubiquitous」を調べてみて下さい。

編:竹林 滋、東 信行、赤須 薫
この辞書はもともと実家にあったものですが、英語学習をするにあたって他の辞書と比べてみました。結果このライトハウスが、文字の見やすさ、語源や類語紹介の豊富さ、挿絵やコラムの読みやすさなど、総合してもっとも使いやすい英和辞典だと思います。
こちらの辞書が実は【星の魔術大綱】の物語を書くきっかけであり【星の魔術大綱】のモデルです。

第9章【Arbor】アルバ2

 紅葉は唾液が完全に乾ききり、喉が完全にカラカラになった。 窓辺に置かれた埃だらけのガラスの花瓶のようだった。 自分の角の表面が、ジワジワと干からびて痛みを感じる。古いフライパンを布鞄の上からギュッと ...

第9章3

「その帽子やコートどうしたの?」
「さあ、役場の誰かの忘れ物じゃないかな」
「コートなんて忘れちゃうんだ」
「珍しいことじゃないさ。僕もターバンとショールと上着を全部忘れた事がある」

- 裏話 -

ショーンと紅葉とガーゴイル。

ショーンのちょっと野暮ったいコートは、昔の映画俳優のような雰囲気を目指して描きました。
あと今までちょいちょい文字だけ出てきたサッチェル鞄がようやくイラストで出せましたね。サッチェルはググってもらえれば分かるのですが、イギリスの通学用カバン——こっちでいうランドセルです。子供用ですが、大人向けにデザインされた物もたくさん売られています。日本で販売されているサッチェルバッグは女性用が多いのですが、英国の専用ブランド「The Cambridge Satchel Company」では男性用の鞄も売られていてめちゃくちゃかっこいいです。

ガーゴイルは2度目の登場ですね。いろんなガーゴイルを見比べて描いてみました。まあまあ愛嬌あって可愛く描けたと思います(当社比)
乗っている柱には下記の本に載っている「柱頭装飾」の項目を参考に描きました。本には草花としか載ってないのですが、多分ユリがモチーフだと思います。

著:鶴岡真弓
東京美術の「すぐわかる」シリーズです。古代から現代まで当時の流行りの建物や家具、宝飾品の装飾モチーフを種類ごとに紹介しています。装飾本は手元にいくつかあるのですが、コンパクトながらミッチリ情報がつまっていて、まずはこの一冊!という本です。
こちらの本のp.41にある13世紀のイギリス・ゴシック様式を参考にしました。

第9章【Arbor】アルバ3

「ショーン!」  声の主を探すと、頬を紅潮させた紅葉が、出版社のガーゴイル像の前で駆け寄ってきた。 「紅葉……いま帰りか?」 「うん、ちょうど終わったとこ……会えてよかった……」  ……会えてよかった ...

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