おわりに
以上が、大陸ルドモンドの概略史である。
動植物の自然あふれる大陸の中で、 皇族、貴族、民族、怪物、そして神々が、それぞれの思惑と意志をもって存在し、生活している。
この他にも、 皇帝が力を失った後の変化や、アルバが権力を持った後の話、学者たちが密かにアルバ転覆の機会を窺う話、海外文明の侵略的接触、災厄の原因と再来の危機など……様々な事象がルドモンド内に降りかかるが、それは次の話のタネに取っておこう。
最後の最後にもう一つ、ルドモンド特有のアイテムを紹介しよう。
三輪式軽自動車「Galliver」だ。
ギャリバーとは、32年前からキンバリー社が売り始めた小型自動車で、前輪が1つに後輪が2つ付いている。荷物の積載に適していて、様々なカラーやデザインがあり、サイドカー付きのも人気である。軽量かつ安価、悪路でも頑丈ということで、大陸ルドモンドでは今、ギャリバーが爆発的に流行っている。
だだっぴろい州街道を、サイドカー付きの黄色いギャリバーで派手にぶっぱなすのは最高さ。
君が普通の人間ならば、酸素ボンベを背負って、ルドモンドを冒険しないか?
一緒にギャリバーに乗って。
作者後書き
作者の宝鈴です。『ルドモンド大陸誌』いかがだったでしょうか?
楽しんで頂けたら幸いです。
この話は、冒険ファンタジー小説【星の魔術大綱】の設定資料集で、 羊猿族のアルバ、ショーン・ターナーという主人公が、ラヴァ州サウザスで起きた町長失踪事件から端を発し、巨大な陰謀に巻き込まれる──その小説の舞台・ルドモンド大陸の、歴史概略本として書いた作品です。
柳田国男著『遠野物語』を参考に、 まるで現実に実在する国の歴史であるかのように描いてみました。
異世界ファンタジーの設定って、ざっくり分類すると 「地球上にあるか、地球上から少しずれた異相にあるか、地球上とは全く違う世界にあるか」の3種類に分かれると思います。
ですが「地球とは全く違う世界」に設定してしまうと、ヨーロッパやアジアなど実在の国の文化が登場するのは不自然ですし、かといって、実在の国に頼らず一から作り上げるのは、非常にハードルが高くなってしまいます。
なので「地球上に存在し、現実世界の文化流入は可能である」「だが獣人や魔法は存在する」「なおかつ、現実世界には獣人や魔法が流出しない」という厳しい条件を違和感なく満たす設定を考え、この『ルドモンド大陸誌』を作り上げました。いかがでしたでしょうか。
まだまだ話足りないところや意図的に隠しているところ、逆に未完成で曖昧な部分などたくさんありますが、今回はキリのいい部分で筆を置きたいと思います。ここまで読んで下さってありがとうございました。