鉄と赤土と太鼓の町・サウザス地区。
どこまでも広がる赤土の大地には、多くの鉄資源が地下に眠っている。
昼は、あちこちの製鉄所や鍛冶場から、活気あるトンカチの音が響きわたり、夜は夜で、大通りから町の端まで、陽気な太鼓の音が鳴りわたる。
太鼓は、サウザスから遠く離れた西の地区・グレキス名産の物が主流だ。どういうわけか120年前から、サウザスでは太鼓が流行っている。
各家庭に太鼓があるのはもちろん、町の各地で太鼓隊が結成され、日々の暮らしや祭りの賑わいに一役買っている。
サウザスの住民は、鉄と太鼓の音が大好きだ。
ここは町で一番大きな酒場ラタ・タッタ。
酒場と下宿を兼ねた赤い大きな建物に、酒と太鼓の音を求めて、夜な夜な住民たちが集まってくる。
夕方、鉱山終業のベルが鳴ると同時に店が開き、ドンチャン騒ぎが繰り広げられる。酒場お抱えの、太鼓隊が鳴らす太鼓の音色は、毎日が祭りのように楽しく、常に、騒がしい。
そんな夜の喧騒がウソのように、昼間しんと静まり返るこの酒場だが、時おり堅く閉ざされた玄関ドアを、忍ぶようにトントン叩き、ひっそり訪れる者もいる。
訪問者は、不運にも、採掘場や製鉄場で傷を負った住民たちだ。
ここの下宿には、今年20歳になる若い男のアルバ──
ショーン・ターナーが住み着いているのだ。